オリジナル・版権物の二次創作共にこっそり書き溜めたものを紹介していく水花〈mizuka〉と亨珈〈kouka〉の二人のブログです。 毎日更新中♪

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プロフィール 

Author:ayaoriimayou

水花<ミズカ>


offline: syui 所属


インテックス大阪直参率高


読むモノ傾向


 ミステリ、ファンタジー、SF。


好きな作家さん


 京極夏彦、梨木香歩、
 上橋菜穂子、津守時生、
 わかつきめぐみ、夢路行、
 荒川弘、しげの秀一、
 波津彬子(敬称略。他にも多数)

よく聞く音楽


 平沢進、ザバダック、
 鬼束ちひろ、グールド
(持っているCDほぼコレだけ。
あとは映画サントラ)

書くモノ傾向


 ファンタジー


(アレ、ほとんど全てコレかも。大雑把にくくると)
 二次創作もやってます。
→履歴「鋼錬」「イニD」他に映画も。
 (映画観て、感想的話を書いたりします)

亨珈<コウカ>


offline: 冒険者ギルド藤戸支部 所属


現在活動停止中。onlineのみ


読むモノ傾向


 ミステリ、ファンタジー、
 SF、伝奇、ホラー
 ノンフィクション
大抵のものは読みますw

好きな作家さん


菊地秀行、鳴海丈
 夢枕獏、宮部みゆき
 六道慧、島田荘司 
 京極夏彦、茅田砂胡
 
 西村しのぶ、JUDAL
MAYZON、垣野内成美
 桜城やや、高橋よしひろ
 (敬称略。
  多すぎて書ききれません)

Loveなもの


 仮面ライダー555とキバ
 FF7
 
 

書くモノ傾向


 ファンタジー


学園ラブコメ


 二次創作?
 ソードワールド設定のオリジナル

 イラストだといろいろ。


昔手をつけたもの↓

ダンクーガ、トルーパー

サイバーフォーミュラ など

この頃は漫画も描いてたり。

 





その日、彼らの後見人は、朝食の時間になっても起きてこなかった。


「どうする?起こした方がいいかな?」
彼の寝室のドアを薄く開けて、そろりと中を覗き込みながら、ささやきあう四人の兄弟。
ベッドの住人からは、規則正しい寝息が聞こえていた。
「夕べ遅くまで仕事してたみたいだから、寝かせといてあげようよ」
長男が言えば、
「昼ごはんになったら起こそうか」
三男が答える。
「そうだな・・・」
次男も頷き、ほら、邪魔するんじゃないぞと、今にも彼のところに飛んで行きそうな末弟をドアから引き剥がして、彼らは彼らと犬だけで朝食をとった。



さて、昼も近づいた時刻になって。
彼の寝室に人影がひとつ。
「ほんとよく寝てるなあ・・・」
こんもりと丸く盛り上がったブランケットを見下ろして、感心したように呟いたのは次男。
長男と三男が昼食の準備をしているので、彼を起こすのを命ぜられたのだ。
僕が行くよとまず末っ子が手を挙げたものの、末っ子だと一緒になって寝てしまいそうなので、ただちに却下された。
ちぇっと舌打ちした末っ子を横目に、長男は次男に頼んだのだ。
彼は、ブランケットに頭まで潜り込んで、すうすうと寝息をたてていた。額の一部と髪の毛が覗いているだけだ。 
このまま寝かせといた方がいいような気もしたけど、夕べだってロクに食べてないと長男は言っていたし、何も食べないのはよくない。疲れているなら一度起きてご飯を食べて、その後また眠ればいいのだ。
自分たちとしては、一緒に遊べなくて、少しつまらないけど。
よし、とベッドの脇に腰掛けて、ブランケットに手をかけて。一気に引き剥がした。
「もう昼だよ!起きてご飯食べようよ!」
耳元で、大きな声で言ってみても。
反応がかえるまでには、間があった。
彼は、ううんと喉の奥で猫のように唸り、体を丸めて寝返りをうった。次男に背を向ける格好である。そして寒いのか、目は開けず手探りでブランケットを手繰り寄せようとする。
「もう、ほら、起きてよ。ご飯だよ」
肩に手を伸ばし、揺さぶると。
目を擦りながら体の向きを変えて、そしてゆっくり目を開けた。
「起きた?」
彼はぼんやりとした顔で見上げてきて、首を傾げながら手をこちらに伸ばしてきて。頭にぱふりと手を置いてきて。何かを確かめるように指でひたひたと髪の毛や顔に触れてきた。
なにと不思議に思って尋ねる間もなく。
彼はにこりと笑った。朝の挨拶にふさわしい、とても清清しい表情で。
「おはよう」
その直後。
次男のすっとんきょうな叫び声が響いたのである。


>2へ

 
2009/11/25 15:00|ネバーランドCM:0

「やあ、近くを通りかかったものだから」

これお土産と焼き菓子の入った袋を彼に渡すと、彼はとても嬉しそうに笑って礼を言った。
「ありがとう、丁度お茶にするところだったんだ。飲んでいくだろう?」
「いただくよ」
居間に案内される。ここは彼が後見をしている子どもたちの家なので、訪れるのは初めてだった。
つい物見高くあちこちを見てしまう。
子ども四人と彼が暮らしているにしては、こざっぱりと片付いているようで、少し安心した。



なんと一度に四人もの子どもの後見人になってしまった友人だが、周りの心配をよそに、以前よりも溌剌として(いやもともと奇妙な行動は多かったが)いるようで、忙しいのが逆にいいのかなどと、周囲は首を捻っていた。 
居間にはこどもたちが勢ぞろいしていて、彼の連れてきた客人をじいっと見上げてきた。
顔立ちのよく似た子どもたちに、無言で見上げられて、何となしに威圧感を感じて、腰が引けた。
「やあ、お邪魔するよ」
声をかけると、
「こんにちは」
こどもたちはにこりと笑い、挨拶を返すが。
この、なにかぴりぴりした空気は一体何事だろうか。何となく居心地のわるいものを感じながらも、腰を下ろす。そこへ彼がお茶とお菓子を運んできた。
「お待たせ。・・・どうかしたかい?」
妙な空気を感じ取ったのだろう。しかし子どもの一人が、
「なんでもないよ」
と、にっこり笑って答えたので、そうかとだけ彼は言った。

・・・私は何か、子どもたちの気に障るようなことでもしたんだろうか。
笑顔で紅茶の入った器を受け取りながら、自問自答する。答えなど出てはこなかったが。
だいいち、気に障るも何も、そういえるほど顔を合わせたことがないのに?
子どもたちの顔を、私は一方的に見知ってはいたが。
「そういえば久しぶりだね、元気だったかい?」
「ああ、元気だよ。というか、君が出て来なかったんじゃないか。たまには顔を見せてくれないと、皆が寂しがっていたよ」
「うん、今度顔出すよ」
彼は頷いて、焼き菓子を一つ、ぱくりとかじった。そしてくすくすと笑う。
「君、よく覚えてたね。わたしがこれ好きだったの」
「いやでも覚えているさ。あれだけ食べていれば」
その焼き菓子は、彼の好物だったので、訪問の手土産にしたのだ。もぐもぐと頬を膨らませて食べる様子は、子どもと大差ない。
後見人と子どもたち、ではなくて、年長の子どもと、子どもたちが暮らしているようなものではないか!
まあ、傍目にはどう映ろうとも、元気でやっているようで安心したのだが。
他愛ない話をしながらも、感じるこの冷たい視線は何だろう。何気なく視線をめぐらせて、驚く。
またもや子どもたちが、揃って私たちの方を見ていたからだ。客に興味があるなんて可愛らしい様子じゃあ、ない。じっと冷静に対象を観察しているようにしか、私には見えなかった。
「子どもたちは、いつもこんなに大人しいのかい?」
笑顔がひきつりそうになりながら、私が尋ねると、彼は、「まさか!」と首を振る。
「まさか!いつもはとても賑やかだよ!ああ、確かに今日は少し静かかな?」
お客が来たんで、大人しいのかな?
子どもたちはにこやかに答えた。
「いやだなあ、いつもは僕たちが、まるで怪獣みたいな言い草じゃない」
「そうそう。僕たちだって、お客さまが来たときくらいは、大人しくしているよ」
ふ〜ん、そう?彼は不思議そうな顔をしながらも、それで納得したようだった。
納得するのか、それでっ、と言えたらどんなにか。
この子どもたちの態度は、そんな可愛らしいものじゃないぞ!久しぶりだし彼とはもう少し話がしたかったけれど、仕方がない。早々に退散する方が私の心臓にとってはよさそうだった。
「それじゃ、私はそろそろお暇するよ」
「え、もう?ゆっくりしていけばいいのに」
「この後行くところがあってね」
そうかい、それじゃ仕方ないねと彼はそれ以上は引き留めてこなかった。立ち上がった私の前に立って、玄関へと向かう。私が玄関から外に出ると、彼も見送りのために外まで出てきた。そして彼は言った。
「みんなによろしく伝えておいてくれるかな」
「お安い御用だ。また、遊びに行こう」
「そうだね」
お互い軽く抱擁して、別れの挨拶をしていたときに。何故目が合ってしまったのか・・・私は悔やんだ。
彼の背後の扉が薄く開いており、そこから子どもたちが顔を覗かせていた。
扉の隙間から覗く、四対の瞳。彼の肩を抱いたまま硬直していた私を不審に思ったのだろう。
「どうしたんだ?・・・おや」
私の視線の先を辿り、彼は首を巡らせる。
「お客様の見送りにきたのかい?」
「うんそうだよ」
ぞろっと子どもたちは勢ぞろいし、口々に言った。
「またいらしてくださいね」
硬直した指を懸命に励まして抱擁をとく。
そして片手をあげながら、あくまで笑顔で答えた自分を、心底えらいと思った。
「ああ、また寄らせてもらうよ」
「ええ、是非」
にっこりととても可愛らしく笑うこどもたち。
友人と仲良くしている様子を見て、彼は、ああなついてくれたのかなと、途方もなく見当違いの事を考えていた。

だから、子どもたちと友人との間に、見えない火花が散ったのを、気づきもしなかったのだ。

 
氷のような火花が散る戦いに敗れ、おおきな疲労感を背負って通りを歩く。
いったい私が何をしたというのだ。
子どもたちから受けた、無言の仕打ちには、おおいに納得がいかなかったけれど。
そして、納得のいく答えを求める気力も、実はないのだけれど。
だから余計に、零れるため息が重いものになり。そして。
おそるべき子どもたちと居る彼が、少し心配になった。
 



あの家には、二度と立ち寄るまい。
そう心に刻んだ日の、出来事だった。


       END

>朝の習慣へ

 
2009/11/24 15:00|ネバーランドCM:0

一歩もひかないよという思いを、目に込めて。
「それ、どうしたの?」
水をとめて、彼は諦めたように答えた。
「うっかり枝にひっかけちゃってね。一昨日くらいまで腫れてたんだけどね」
今はもう平気だよと腕を引っ込めようとする彼よりさきに。傷のない所を掴んだ。
「痛い?」
傷の横を指でなぞると、痛いのかくすぐったいのか、腕はびくりとふるえた。困ったような顔で、僕の腕を振りほどく事もできずに、彼は僕を見下ろしていた。
「痛いよね、まだこの辺血が滲んでるし」
「汚れるから・・・」
傷口に触れるか触れないかのところを辿る指を、制する言葉は、けれど弱々しかった。
ねえ、本当に嫌なら、僕など振り切れるでしょう?
「ねえ、痛いよね?」
何度目かの僕の問いに、とうとう根負けしたのか、彼は頷いた。
「痛いよ」
なんなんだよ、一体と彼は呟いた。
「こっち来て」
彼の腕をひいて、キッチンの隅に連れて行く。
「座って」
彼は僕の顔を見て、僕が引きそうにないのを見てか、何も言わずに座った。
いつもはまだ見上げている彼の頭が、見下ろせる位置にあるのは、なかなか新鮮な気分だった。
ちょっと待っててと言い置いて、救急箱を取ってきた。彼は腕の傷を見ながら、ぼんやりと座っているようだった。
「お待たせ。腕、貸してくれる?」
「・・・なにするわけ?」
「もう痛いことしないし、それ、そのままだとまずいでしょ?手当てするよ」
さっきはごめんねと言うと、彼は、もういいよと答えた。傷口を消毒し、包帯を巻く。僕の手元を見ながら、彼はぽつりと言った。
「さっきのは、一体何だったの。よくわからないんだけど」
なんだか怒っているみたいに見えたよ。
僕は答えなかった。たしかに怒っていたからだけど、それが八つ当たりに近いものだということもわかっている。だからすぐには答えられなかった。
「ごめんなさい」
いや、と彼は首を傾げる。
「怒ってるわけじゃなくて。ただ、いつもの君らしくないから、どうしたのかなと思ったんだよ」
さらりと揺れる髪。しろくまだらに染まった。
「ちょっとまだ座ってて」
流し場でタオルを水に濡らして、固く絞る。それで、彼の髪の毛についた粉や、粉の塊を取り始めた。いいよそんなのと言いながら、彼は僕の好きなようにさせてくれた。
「・・・あのさ、実は僕、聞いちゃったんだ。あなたが、弟と約束してたの」


もう二度と大丈夫って言わないって。


「・・・そう。確かに約束したよ」
「それから、あなた僕たちの前では、その言葉言ってないよね。僕の覚えている限りでは」
「そう、かな?」
「そうだよ。そんな約束、しなければよかったのに」
「なんで」
「だって・・・」
言葉に詰まる僕を、近いところから彼の目が見上げる。いいから言って見なさいと促すように。
「その言葉ってさ、確かに空元気みたいなところもあるけど、そうやって自分を励ますようなところもあるでしょ?」
「そうだね、確かに何かの呪文みたいに、繰り返し使っていた時もあるね」
「じゃあ・・・今は?言いたくなる時もあるんじゃないの?」
うん、としばらくしてから、彼は頷いた。だって、咄嗟にさっきも言いかけていて、それから言い直していた。
「なんで僕の前でも、言おうとしないのかな」
「だって、普段言っていると、つい言ってしまうからね」
だからその言葉を私は使わないよと、なんでもないことのように彼は笑う。
言葉一つ、の。
約束を守るために。
「そこまでして、その約束守るんだ」
約束したからねと、当たり前のように言う。それにね、と彼は付け加えた。
「あの言葉は、聞かされる方にとっては、時々・・・悲しく聞こえる言葉だから」
はっと僕は思い出す。
母がその言葉を口にしていた様子を。
そして、その時僕がどう感じていたかを。

そうだね、あなたの言う通りかもしれないけどね。
僕は、あなたがそうやって言葉を飲み込むたびに、言い表しようのない気持ちになる。
そんな約束をさせた弟にも、それを守ろうとするあなたにも、怒りを向けそうになるんだ。
あなたが、そうまでして弟との約束を守ろうとするのは、なぜ、と問う言葉を、何度も飲み込んで。
同じだったのに。
父親を亡くしたのは、僕もおなじなのに。


「・・・そうだね。そうかもしれないね」
はい、これでだいぶましになったよ。まだらになっていた髪の毛は、そうとはわからない程度には綺麗になった。乱れた髪の毛を指で梳いて整えると、くすぐったそうな顔で肩を竦めていた。
「髪の毛伸びたね」
「まあね。そろそろ切らなきゃとは、思ってるんだけどね」
さらさらと指に馴染む感触に、名残惜しいような気もしたけど。
「ありがとう」
さて、そろそろ焼けたかな。彼はオーブンを覗き込む。
「あと少しかな」
オーブンの前で、いつ出そうか見計らっている彼。
僕は残したままの洗い物を片付けるために洗い場に立った。
そろそろおやつの時間だ。遊びまわってお腹をすかせた弟たちが、帰って来る。
彼は、僕が気付かなかったように、怪我の事などおくびにもださずにいつもどおりに振舞うのだろう。
しかし、それをとやかく言う権利は、僕にないのだ。そうする彼をどんなに見たくなくても。
そしてここにいたいと思うなら、僕はそれを見ざるを得ないのだ。

キッチンにケーキの焼ける甘い匂いが漂う。
いつもならわくわくするような匂いのはずなのに、今日はやけにあまくて、同じくらい、にがい気がした。

 

それは、気持ちのいい風が吹いていた、ある日の午後の話。


       END

>たとえばこんな日常へ

 
2009/11/23 15:00|ネバーランドCM:0



気持ちのいい午後だった。
風もほどよく吹いており、洗濯日和でもあり、外で遊ぶにはまた絶好の日であったり。
庭には木にロープを渡して、洗濯物を吊るしていた。兄弟四人分+一人分の洗濯物が、風にひらひら帆のようにはためいていた。

その横で遊ばれて、せっかくの洗濯物を台無しにされちゃあたまらない、とばかりに、兄弟は公園へ行きなさいとの鶴の一声で、早めのお昼を済ませて、公園へと出掛けていった。
長男の代わりに、お目付け役は彼の犬で。三男が、“次男よりはよほど頼りになるよね”などと嘯くものだから、次男がむくれないように長男は慌てて小声でたしなめたものだ。
彼は彼で、犬の毛むくじゃらな体を撫でてやりながら、“よろしく頼むよ”と言い聞かせていた。おん、と犬は元気よく鳴き、弟たちに手綱をとられて大人しくついて行った。まかせてと言っているみたいに、ふさふさの尻尾をふぁさりと揺らして。
ねえ、今のどういう意味?
弟たちを送り出した玄関先で彼に問えば、彼は目を丸くして、なんのことだいと訊いた。
よろしく頼むって。
ああ、と彼はなんでもないふうに、そして当たり前のように言った。
あれは、とても頭がいいから。あの子たちが危ないことをしそうになったらとめてくれるだろうと思って。
ふーん・・・。
弟たちはさしずめ群れてじゃれる子犬にでも見えてるんだろうか・・・見えてるんだろうな、あの犬には。
一面では正しいかもしれないけど。
首を振りつつ、家の中に入った。
さて、これから自分たちには仕事が待っている。特に張り切っているのは、もちろん彼の方であるが。
残った彼らが、何をやっているかといえば。キッチンで腕まくりをして、エプロンをつけて。
「さて」
と彼は作業台の上を見た。小麦粉や卵、牛乳が、でん、と置かれている。
「今日は何を作るの?」
同じように腕まくりをしながら僕が尋ねると、彼は少し目を見開いて、首を傾げた。
「君も行ってよかったのに。そりゃ手伝ってくれるのはありがたいけどね」
「四人分の、しかも食べ盛りの男の子の胃袋は知ってるでしょ。一人じゃ大変だよ」
そうだね、と彼は言う。
「で、なに作るの」
紙袋から、ころりと果実を取り出しながら答えた。
「いちじくのケーキだよ」

 外はいい天気。家の中にいるには、勿体無いような。
キッチンにはいちじくを砂糖とブランデーで煮た、甘い香りが広がっている。彼が鍋でいちじくのコンポートを作っている間、僕はボールに割りいれた卵を砂糖とあわせて泡立てていた。これがなかなか力が要るのだ。
「女の人ってすごいね」
母も、こうして僕たちにお菓子やご飯を作ってくれていたんだなあと思った。
「そうだねえ」
とても実感のこもった声で彼が言ったので、僕は顔を上げて彼を見上げた。
整髪料で固めてない彼の髪は、さらさらと流れて額をおおい、そして伸びかけのそれは、目を隠すほどの長さになっている。それがうっとおしいのか、時々顔をしかめて頭を振っていた。
「どうしたんだい?」
音を立てなくなった僕の手元を見ながら、彼が尋ねた。「疲れた?」
僕は慌てて手を動かした。僕は今何を見ていた?何を考えていた?
「ううん、まだまだ。これくらいでいいの?」
わざとのように明るい声を出して、ボールの中身を見せた。
「そうだね、じゃ、小麦粉入れるから、さっくり混ぜてくれるかい」
「うん」
ふるいあわせた小麦粉が、ボールに入る。それを“切るように”混ぜた。
「混ざった?それじゃこれに入れて」
彼が差し出した大きな器には、イチジクの砂糖煮が敷き詰められていた。そこに生地を流し込んだ。彼は表面を平らにしたあと、いちじくを載せてオーブンへと入れた。
「さ、これであとは焼くだけだ。助かったよ」
ありがとうと彼は言うけれど、その実どこまで役に立ったのかは、疑問だ。手際よく済ませたいなら、彼一人でやった方が早いに決まっている。その証拠に。
作業台を見た。そこには、焼きあがったばかりのスコーンが、こんもりと山になっていた。
「スコーンも今日のおやつ?」
道具の片づけを始めながら、尋ねた。
「いや。日持ちするから、明日か明後日にでも食べてもらえればと思ったんだよ。仕事があってね、しばらく帰れそうになくて」
とても済まなさそうにいう彼に、僕はううんと首を振る。
「そうなんだ。お仕事大変だね」
そうでもないさと彼は肩を竦めた。そうした拍子に、耳の後ろにかけていた髪の毛が、ばさりと顔の前に落ちかかり、彼は眉をひそめてかき上げた、のだが。
「・・・髪の毛、白くなっちゃったよ」
「・・・・そうか、粉、ついてたんだっけ」
手をまじまじと見つめて、はははと笑って、また頭をかこうとしたので、僕は慌ててとめた。
「とにかく手を洗った方がいいよ」
彼が手を洗っている流しの横に、僕は使い終わったボールや道具を運んできた。水を使う彼の手元が見える。袖を捲り上げられた、指先から白い肘の辺りまで。
何気なく視線をやり、驚いた。肘の内側に、長く赤い筋のようなものが見えたから。
「それ、どうしたの?」
ああ、と彼はすこし首を傾げて、自分の肘の内側を見て、言った。
「少しひっかけただけで・・・別に、だ・・・じゃなくて、何でも・・・」
どう言おうか言葉を探す彼。ざあざあと水の流れる音が、やけに耳についた。彼がある言葉を飲み込んだのが、わかっているから。だから、僕はもう一度聞いた。

>Liar 2〈後〉へ

 
2009/11/22 15:00|ネバーランドCM:0

ことのは。 

大きく表示するにはここをクリック★

 

オリジナル 

各タイトルをクリックすると、作品別のindexにとびます。

World〜きみのためにできること〜


原案:亨珈

執筆:亨珈&水花のリレー


2003年に完成。
本編56話完結
外伝
『いちばんはじめのおくりもの』
9話完結
執筆:水花
続編短編集
多数あります。

うさぎをめぐる話


執筆:水花


シリアス本編とほのぼのファンタジーの短編集。
 

二次創作 

版権モノの二次創作です。タイトルにマウスオンでジャンル確認できます。クリックで作品別のindexにとびます。

BLUE GENE

執筆: 水花

HAPPY HAPPY VALENTINE

執筆: 水花

GARDEN

執筆: 水花

月下美人

原作:古森 壽
/脚色&執筆:亨珈

SNOW BLIND

執筆: 水花

はなさくにわへ

執筆: 水花

FAIR ≠ FEAR

執筆: 水花

JOKERシリーズ

執筆: 冒険者ギルド藤戸支部
side 亨珈

鋼の錬金術師 短編集

執筆:水花

告白

執筆: 亨珈

夢を見る方法

執筆:水花

MOON SHINER

執筆:水花

 

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