オリジナル・版権物の二次創作共にこっそり書き溜めたものを紹介していく水花〈mizuka〉と亨珈〈kouka〉の二人のブログです。 毎日更新中♪

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プロフィール 

Author:ayaoriimayou

水花<ミズカ>


offline: syui 所属


インテックス大阪直参率高


読むモノ傾向


 ミステリ、ファンタジー、SF。


好きな作家さん


 京極夏彦、梨木香歩、
 上橋菜穂子、津守時生、
 わかつきめぐみ、夢路行、
 荒川弘、しげの秀一、
 波津彬子(敬称略。他にも多数)

よく聞く音楽


 平沢進、ザバダック、
 鬼束ちひろ、グールド
(持っているCDほぼコレだけ。
あとは映画サントラ)

書くモノ傾向


 ファンタジー


(アレ、ほとんど全てコレかも。大雑把にくくると)
 二次創作もやってます。
→履歴「鋼錬」「イニD」他に映画も。
 (映画観て、感想的話を書いたりします)

亨珈<コウカ>


offline: 冒険者ギルド藤戸支部 所属


現在活動停止中。onlineのみ


読むモノ傾向


 ミステリ、ファンタジー、
 SF、伝奇、ホラー
 ノンフィクション
大抵のものは読みますw

好きな作家さん


菊地秀行、鳴海丈
 夢枕獏、宮部みゆき
 六道慧、島田荘司 
 京極夏彦、茅田砂胡
 
 西村しのぶ、JUDAL
MAYZON、垣野内成美
 桜城やや、高橋よしひろ
 (敬称略。
  多すぎて書ききれません)

Loveなもの


 仮面ライダー555とキバ
 FF7
 
 

書くモノ傾向


 ファンタジー


学園ラブコメ


 二次創作?
 ソードワールド設定のオリジナル

 イラストだといろいろ。


昔手をつけたもの↓

ダンクーガ、トルーパー

サイバーフォーミュラ など

この頃は漫画も描いてたり。

 





オリジナルファンタジー
「World〜きみのためにできること〜」完結   執筆:亨珈&水花
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あとがき

16歳の少女スティールは、突然人間の姿に変わった愛犬シャールに別れを告げられる。
王の血を引くシャールは王妃の追跡を逃れるため〈狭間の界〉にやってきていたのだが、変化の効力が切れて居場所を王妃に知られてしまい、スティールを護るためシャールは〈銀の界〉へと戻っていく。追いかけるスティールとはばらばらに、王妃や義兄たちから命を狙われるシャール。
一方、シャールの義兄とは知らずに第一王子ディーンと劇的な出会いをするスティール。王妃の命令とスティールの願いの間で苦悩するディーンの取った行動とは・・・。


World外伝
「いちばんはじめのおくりもの」 スティールとリルフィと金の君の出会いの話   執筆:水花
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hyakunennnonemuritop


World続編短編集 タイトル毎に時系列が前後する場合もありますが、亨珈作品は上から下へと作品順に日にちが進みます。また亨珈作品と水花作品で微妙に設定が違いますので要注意w(ベースは同じです)
「たったひとりに逢うために」 狭間の界に現れた青年は・・・   執筆:亨珈
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「夢で逢えたら」 夢の通い路   執筆:水花   
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「あなたにあいたくて」 シャールの心の中では   執筆:亨珈  
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「ひみつのおかたさま」   執筆:水花  

「ひみつのおかたさま〜ジルファとの会話」   執筆:水花   

「Pieces of tears」 「夢で逢えたら」後日談   執筆:水花   

「水面下の攻防」   本編の裏舞台ネタ   執筆:水花  

「ある父親の苦悩」  1 2 3 4    執筆:水花  

「Answer」 新しい人生を送る青年と少女の再会も劇的で…  執筆:亨珈
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「むかしはものを おもはざりけり」 1 2 3  シャールの苦悩   執筆:水花

「誘惑」 1 2 3   ローレンスの駆け引き   執筆:亨珈

「揺れる想い」 1 2 3  「誘惑」当夜。スティール・リルフィ・ジルファは。   執筆:亨珈

「誰かの願いが叶うころ」 1 2 3   リルフィからの忠言   執筆:水花

「誰かの願いが叶う頃」 1 2 3 4  クリードの本国では大きな動きがあって・・・   執筆:水花

「Days」 1 2 3 4 5 6 7 8  「誘惑」翌日。スティングへの告白。   執筆:亨珈

「きみのためにしたかったこと」 1 2 3 4 5 6   
「誘惑」翌々日。告げられた言葉にシャールが過剰反応。   執筆:亨珈

「ただそばにいさせて」 1 2 3 4 5 6 7 8   
更にその翌日。夜這いさせたかっただけ(笑)   執筆:亨珈

「チカラノウタ。」 
 〜風の知恵 1 2 〜十字路で 1 2 3 4
〜おくりもの 〜GIFT 〜かがり火
〜空を指す 〜星の群れ 1 2 3  
過去の自分と今とそして未来へ。   執筆:水花

「百年の眠り」 6/15〜7/8連載予定 
暴走したシャールを止めるために再び銀の界へ。ハンカチ必須の物語。   執筆:水花
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「揺るがない想いをきみに」    執筆:亨珈 7/9〜26連載予定
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更に続いてます。「好き」の違いに気付き始めるスティールはローレンスに。その時スティングは。

いつも応援ありがとうございます。
コメントへのレスはコメントに。拍手へのレスは拍手コメントにつけさせてもらっています。

2008/10/6 掲示板を設置しました。ブログには基本的に小説だけUPしますので、亨珈と水花からのメッセージはこちらに書き込みします。
サイドバー右上よりどうぞ(ノ*゜▽゜*)

基本的にはこのブログからの文章及び画像の転載・引用などはご遠慮くださいませ。但し、亨珈のイラストのみお持ち帰りOKとさせていただきます。まだまだCG初心者で下手っぴですが(爆)

小ネタ漫画 1
過去のトップ絵倉庫



 
2009/07/27 10:00|indexCM:0

 やめて、スティールに酷いことをしないで、何故僕はこんなことをするの。
 硝子ごしの世界を見ているようだった。握った拳の皮が破れるほど強く叩いても、割れない硝子の壁。
 声の限り叫んでも、“自分”の行いを止める力にはならなかった。
 スティールと一緒に眠る・・・二人だけの世界に閉じこもって。甘美な誘惑だけど、僕はそんなこと、望んじゃいない。いや・・・心の奥底で望んでいたのかもしれないけど、けしてスティールを傷つけたくはない。
 それなのに・・・“僕”はスティールの心と体を傷つけていく。やめてくれと僕は悲鳴をあげた。
 犬の姿の僕が、“僕”に飛び掛り・・・スティールが涙交じりの声で叫んだ時。僕は澄んだ鈴の音を確かに聞いたと思った。
 スズ。

 レン、リン、長老さま、ヤツカ、ユキさん、そして、スズ。
 ああ・・・そうだね。世界は、もう。

 どんなに叩いても割れなかった、硝子の壁が、粉々に砕け始める。歪んだ笑みを浮かべていた“僕”は、静かに笑っていた。
 同じだけの思いを返してもらえないからと言って、それで彼女を傷つけていいはずが無い。
彼女には、笑っていて欲しいんだ。
 それが・・・心の中をさらって、最後に残った願い。
 心の奥底に隠した望みの・・・さらに奥にあったもの。一番初めに思ったことと、最後に願うものが・・・同じであった。
 “僕”は静かに呟く。
 思いが重ならなくてもいいじゃないか。酷く傷つけてしまったのに、何度も彼女は手を伸ばしてくれた。
 その思いだけで十分じゃないか。確かに、僕は彼女に大事にされているのだから・・・と。
 “僕”は僕に手を差し出す。僕も手を差し出した。鏡を見るように僕たちは向かい合うと、“僕”は曇りのない表情で笑った。
 後の事はよろしく。・・・スティールのことも、頼むよ。
 ごめんねと呟きを残し、“僕”は僕の中に戻ってゆく。そして、走り寄ってきた犬の僕も。
 分かたれていた僕は、一人の僕に戻ることが出来たのだ。その瞬間、光が弾けて・・・目の前が白く白く、眩いばかりの光で満ちてゆく。
 僕たちは、僕たちを待つ人がいる世界へ戻る。
 そうだ、二人だけで世界は完結してくれないのだ・・・それは、きっととても幸いなこと、だった。


「ちょっと、大変よっ、すぐ来てっ」
 リルフィの叫び声に、ジルファ、レン、リンはすぐさま主の書斎へ駆けつけた。
スティールが茨の繭に取り込まれて、三日が経過していた。事態の異変に備えて、レンに加えリンやジルファ、もちろんリルフィも氷の館に留まっていた。
主は好きにすればいい、用向きは家令に伝えるようにとだけ言い、あっさりと彼らの滞在を許した。
身のうちを焼く焦りと戦いながら、彼らは待った。何か・・・少しでも起きないかと、起きてくれればよいと願いながら。異変に気付いたのは、丁度書斎を見守っていたリルフィだった。茨の茎には鼓動するように光が明滅していた。その拍動が止んだのだ。そして、急速に高まる力の波動。何かが起きようとしていた。
 書斎に皆と・・・主まで駆けつけ、そうして・・・皆が見守る中、茨に繁った葉の間から、するすると蕾が現れた。いくつも、幾つも、数え切れないほど。
「いったい、何が起きるの・・・?」
 リンが呟く。くすんだ緑の茨は、たちまち鮮やかな新緑に色を変えてゆく。
「あれを見て・・・」
 ジルファが茨の繭を指した。硬く硬く閉じられた繭から、光が零れ始めていた。光は次第に強く、眩くなってゆき、彼らは思わず目を細めた。
「繭が開いてゆくわ・・・!」
 リルフィが声を上げた。繭の中に、二人の人影を見つけたのだ。そして光でしろく満たされる。あまりの光の洪水に、彼らは目を閉じた。
 次に目を開けた瞬間・・・彼らは信じられない光景を見たと思った。
 柔らかそうな新緑の中、咲き誇る、花、花、花・・・様々な色の花で、満たされていたのだ。
 茫然としたのは僅かのこと。すぐさまリルフィは繭のあった辺りへと飛ぶ。繭は剥がれ落ち、残骸と思われる茨が転がっていた。それにも・・・まるで棘の代わりのように、花が咲いていた。
 少年の声がする。必死に呼ぶ声が聞こえる。
「スティール!目を覚ましてっ」
 目を閉じた少女を抱きかかえ、シャールが必死に呼んでいた。
「スティールっ」
 ぴくり、と少女の睫が動いた。そして、ゆるゆると瞼が開いてゆく。ぼんやりとした目で辺りを見回し、泣きそうな顔で少女を見つめる少年に気付き・・・言った。
「おかえり、シャール」
「・・・ただいま」
 シャールは泣きそうな顔で笑い、スティールを抱きしめたのだった。



>22へ
 
「ねえ、スティール、僕のこんな部分は要らないでしょ?あっても邪魔なだけだし、コレがあるから力だって抑制される。ない方が、僕はもっと強くなれるんだ」
 そうしたら、スティール。僕と一緒に居てくれる・・・ううん。
 さもいい考えだというように・・・無邪気に“シャール”は笑う。
 初めて見たような・・・今までで一番“幸せそうな”顔で。
「ずっと此処に居よう・・・二人で。そうしたら、誰も僕たちを傷つけないし、誰かを傷つけることもない」
 うっとりと笑いながら、“シャール”はスティールの傍に跪いた。少女の乱れた紅茶色の髪の毛を指で梳き、一房を手にとって口付ける。スティールは茫然と“シャール”の顔を見つめていた。
「シャール、あなた、何を言っているか、わかっているの?」
「勿論わかっているよ。僕が居なくったって、それほど皆困らないじゃない。僕は君が居ればいいし・・・いい考えでしょう?」
 少女の頬をいとおしそうに撫で、“シャール”は無邪気に笑う。手は頬から顎、首を順に撫でていく。
 羽でくすぐるような触れ方に、スティールは身を捩った。
「や、何するの・・・ねえ、シャール、目を覚まして」
「スティール、僕の正気を疑ってるの?僕は正気だよ、この上もなくね。もっと早く決断すればよかった。そうすれば、心を煩わされることもなかったのにね」
でも、これからは幸せな夢を見られるんだ。うっとりと呟いた“シャール”に、スティールは叫んだ。
「何言うのよう。シャール、茨の繭のそばで、レンさんとリンさんが、とても心配そうな顔で立ってるの知ってる?二人ともあまり寝てないみたいな、疲れた顔してた。いつか、あたしに紹介してくれるって言ったよね。友達みたいなんだって、嬉しそうに言ったよね。そんな人たちを悲しませるの?」
「・・・彼らだって、すぐに僕の事なんか忘れるよ。時間が全て、押し流していく。どれほど強い思い出も、容赦なく押しやっていくよ。そういうものだろう?」
「たとえ・・・いつか忘れるのだとしても!今この時、シャールはあの二人をとても傷つけているんだよ?それをわかってる?いつか忘れるから・・・いつか悲しみも薄れるからって、今この時を蔑ろにしていいはず、ないじゃないっ」
 スティールは涙混じりに叫んだ。酷い言葉を淡々と話す“シャール”。それは一面の真実であっても・・・だからこそ、スティールは立ち向かわなければならなかった。
 “シャール”は冷めた目でスティールを見下ろし、面白くないなあと呟いた。
「いい考えだと思ったのに。賛成してくれないんだ・・・まあ、いいや、僕は僕の思うとおりにするよ」
 彼は立ち上がった。しゅるしゅると茨がスティールの体を這い登る。そのおぞましさに体中に鳥肌が立った。茨を振り払いたくても自由にならない腕では、それは叶わない。やがて茨は服の隙間から入り込み、素肌を直接這い始めた。茨が這うたび、棘が皮膚を傷つける。
 その痛みに、スティールは悲鳴をあげた。白い腕の内側や、太股の内側を・・・そして胸のふくらみを茨は這い・・・その度にスティールは身を捩り、のたうちまわった。
「いや・・・っ、やめてっ」
 “シャール”は綺麗な笑みを浮かべて、血を流し制止の声をあげる少女を見下ろしている。
 スティールは痛みに耐えながら、それでも訴えかける。
「シャール、お願いだから、目を覚ましてっ」
「目は覚めてるって言ったでしょう?・・・でもスティール、これから僕は眠るから。君も一緒に眠ろうよ」
 ねえ。これを飲んで?
 のびた茨の先には、小指の先程の小さな実がついていた。彼女の口元を這い回り、唇をこじ開け口の中に入り込もうとする。スティールは唇を噛み締め、顔を背けた。
「スティール・・・ねえ、僕がお願いしてるんだよ?聞いてくれないの?」
 悲しげに“シャール”は首を傾げる。スティールは心を決めた。たとえあの実を飲まされて、眠る結果になったとしても・・・自分に出来ることをすべて、やらなければ、と。
 スティールが口を開きかけた時。“シャール”の体が衝撃に倒れこんだ。犬のシャールが体に茨を巻きつかせたまま、飛び掛ったのだ。茨の拘束が緩む。その隙にスティールは口元の茨を振り払い、叫んだ。
「シャール、本当に眠れるの?リンさんやレンさん、長老さん、ヤツカさんにユキさん、それにスズ!皆、シャールがとっても楽しそうに話した人たちだよ!その人たちを悲しませて、シャールは眠りの中に逃げ込めるの?
それで、本当にいいの?」
 シャールに圧し掛かられたまま、“シャール”は目を見開き・・・呟いた。
 スズ、と。

>21へ


 

真っ暗だわ。自分の手も見えない。
 スティールは恐る恐る歩いていた。何かないか手で探っても、伸ばした手は空を掴まえるばかり。
 踏み出した先に、深い谷が待ち受けているかもしれない。暗闇は恐怖を増幅させる。それでも・・・爪先で地面を探りながら、一歩一歩進んでいた。彼の名前を呼びながら。
「シャール、何処に居るの?」
 あの時・・・茨が幾重も体に巻きついて、息が出来なくなった。そうして目の前が暗くなり、気がついたら真っ暗な空間に放り出されていた。此処は何処だろうと何も見えない恐怖で息苦しくなったけれど、遠くから微かに音が聞こえてきて・・・思い当たった。
 一定のリズムで刻まれる音。聞いていると安心する、生まれる前から聞いている音。
 鼓動だわ・・・茨も、息をするみたいに光が点滅して、拍動していた。
 ここはきっと、シャールが作った繭の中なんだと。
 スティールが目にした繭は、もちろんこんなに大きいはずはないけれど、それでもそれは確信だった。
「シャール、何処にいるの?」
 方向すらわからず、スティールは何度もシャールの名前を呼びながら歩き続ける。一体どれくらいの時間が経ったのだろうか。
 ゆらり、と目の前の空間が揺れた。ぼうっと淡い光を纏いつかせ、現れたのは。
「・・・シャール?わ、犬の姿のシャールだっ」
 銀の毛並みが美しい、すらりとした姿の犬がそこに居た。それはまぎれもなく、長い時間共に過ごした、家族としてのシャールの姿だったので。
 スティールはシャールに駆け寄り、両腕で頭に抱きつき、柔らかな毛並みに顔を埋めた。
「シャール、何処に居たの?あたし探していたんだよ・・・でもよかった、会えて」
 くうんとシャールは鼻を鳴らした。
「茨の繭に閉じこもったって聞いて・・・驚いたんだよ。ねえ、此処から出よう?皆とても心配して、待っているよ」
 シャールは答えない。
「シャール?なんで答えてくれないの?」
 スティールは銀の毛並みから顔をあげ、シャールの顔を正面から見た。綺麗な目は真っ直ぐに少女を映して・・・悲しそうに揺れている。もしかして、とスティールは思った。
「もしかして・・・シャール、喋れないの?」
 くうん、とシャールは是、と鳴いた。
「どうして?元の姿に、戻れないの?」
 くうんとシャールは鳴き・・・そして、いきなり歯を剥き出して唸り声をあげ、激しい威嚇を始めた。
 スティールが今まで見たこともないくらい、激しいものだった。
「シャール、一体どうしたの?何があるの?」
 その答えはすぐにわかった。シャールの視線の先がぐにゃりと歪み、そこから現れたもの。
 淡い光を体に纏わりつかせ、薄く微笑みすら浮かべた彼がいたから。スティールは口元を手で押さえ、目を見張る。あたしの傍にシャールが居るのに、何故、目の前にも。
「スティール、僕を呼んだ?」
 シャールが居るのだろう。優しい微笑を浮かべて、両手を伸ばし、彼は近づいてくる。暗闇も障害にならないのか、足取りに迷いはなかった。銀の髪の毛が肩につくほど伸び、表情も幼さが抜け、大人びた印象を与える。
 スティールと会わない間に、急速に彼が大人びたように見えて、スティールは少し寂しかった。
「シャール、だよね・・・・」
「何故そんなことを聞くの?僕はシャールだよ。まさか、もう僕の顔忘れちゃったの?」
「ううん、そんなはず、ないじゃない。何だかちょっとオトナになったみたいな感じがしたの」
 会話する間にも、犬のシャールの唸り声はやまない。それどころか、ますます激しくなってくる。どうしちゃったのとスティールは困り果てた。
「シャール、どうしたの、一体」
 途端に、“シャール”が顔を顰めた。
「何言うんだよ、スティール。シャールは僕だよ。それはただの犬じゃないか」
 スティールは自分の耳を疑った。そして、犬のシャールの首に腕を回し、“シャール”を見上げた。
「あたしはシャールを見間違えないわ。この子はシャールよ。あなたは誰なの?」
 “シャール”は顔を歪め、吐き捨てるように呟く。
「まったく・・・深く眠らせたつもりだったのに、邪魔するか」
 なんのこと、とスティールは首をかしげ・・・そして悲鳴を上げた。音もなく近づいた茨に、絡めとられたのだ。両腕、両足、腰、首・・・全てに巻きつかれ、身動きが取れない。抱きついていたはずのシャールから、力づくで引き離された。硬い地面に引き倒されたが、肘をついて半身を起こし、そして見た。
「きゃあああっ、シャールっ」
 犬のシャールは“シャール”に駆け寄り、吠え立てるが、“シャール”は煩そうに手を振った。すると別の場所から茨が現れ、銀の毛並みにびっしりと絡みつく。
 鋭い棘が刺さり、銀の毛並みにはたちまち血が滲み始めた。
「いやっ、シャール、お願いやめてよっ」
 苦しい息の下でさえ、シャールは威嚇をやめなかった。それが気に喰わないのか、“シャール”は目を酷薄に細め、笑った。


>20へ


 

クリードには、金の君が謝罪した理由がわかる。わかりたくもないが、と胸の内で呟きながら。
統治者の判断、という奴だろう・・・情を廃し、ただ効果的で効率的な方法を求める。少ない力で、最大限の効果を得ようとする。冷たい無機質な・・・剥き出しのエゴよりも醜くさえ写るモノ。
 それを、どうしても受け入れられなかったからこそ、クリードは家を出、本国を離れたのだった。
 大きくため息をついたとき、携帯電話が鳴った。着信音で従兄弟だとわかり、条件反射で顔を顰めたものの、すぐに出た。
「あっミクちゃん、お仕事お疲れ様」
「・・・お前は疲れている様子もないな」
「僕はいっつも元気だもん!でも心配してくれたの?嬉しいなっ」
「・・・用件無いんなら切るぞ」
「無かったら電話しちゃ駄目なの?」
「切ってやるっ」
「あ〜待ってミクちゃん。ほんとにもう気が短いんだから。あのね、銀でますます変な波出てない?なんか力を一点に集めているみたいな、変な感じ」
「なんだと・・・?」
 モニターを見てクリードは呻く。いつの間に、と思った。見る間に力は一点に集中し・・・そして肥大化したまま、不気味に点滅している。
 その拍動すら聞こえる気がして、クリードは背筋に冷たいものが走るのを感じた。これか、と思い当たる。
 銀で、何か起こると思うわ。
「・・・少し前に、金の君から知らせがあった。銀で何か起こるだろうと」
「金の君は、この事態を予想してたってわけ?」
「スティールがな・・・銀へと行っているらしい。俺もさっき知らされて驚いた」
「ああ・・・じゃあ、多分スティールは、シャールと会えたんだろうね」
「そうだろう・・・事態はまだ、どう転ぶかわからないな」
 明滅する光。手出しできぬ世界。そう、どんな力があっても、定められた理を踏み越えられない・・・縛られた身では、焦りに身を焦がして待つしか出来ない。
 それは、金の君でも同じ事。わかっているけれど・・・。
「大丈夫だよ、ミクちゃん」
 電話の向こうで、落ち着いた声がする。いつもの軽い調子はなりを潜め、ゆっくり舞い降りる雪の花のような。
「大丈夫だよ、スティールは無事に帰ってくるよ。だってミクちゃんの子だもんね、どんな障害が立ちふさがっても、全部蹴り飛ばして戻ってくるよ」
 言い方に引っかかりはあるものの、従兄弟が自分を元気付けようとしてくれるのはわかったから。
 クリードも、ほっとため息をついて、焦る心を宥めたのだ。
「ああ・・・戻ってくるに決まってるさ」


「・・・あんた、此処にいたの」
 後ろからリンが来ているのはわかっていたけど、リルフィは振り向かなかった。声を掛けられても、じっと緑の繭を見上げていた。頑なな様子にリンがため息を零す。
「少しは休んだら?此処はあたしが替わるわよ」
リルフィは・・・金の鳥は壊れた扉に止まり、部屋の中を見つめている。茨で埋め尽くされた中には、拘束される恐れがあるため、少し離れた場所で見守り続けていた。
 茨の繭に取り込まれた少女を。何も出来なかったことがとても悔しくて、体を休めるどころじゃなかった。
「いい。眠れる気分じゃないし、それに・・・」
 リンも不安そうに、待ち焦がれるように繭を見つめている。シャールをとても心配している様子が伝わってきて、リルフィはそっとため息を零す。
 スティールに対する言葉には、心に蟠りがあるけれど・・・今は言い争う気になれないわ。
「スティールが戻ってきた時、すぐ手助けできるように、傍に居たいのよ」
 そう、とリンは頷いた。
 スティールを取り込んだ後、茨は不気味なほど大人しくなった。太い茎は呼吸するように明滅し、その光は繭へと集まってゆく。棘で覆われた茨の茎には、茎の太さに見合う、人の顔ほどもある大きな葉が茂り始めた。
 嵐の前の静けさだね。ジルファは相変わらずの飄々とした顔でそれを評す。
 その観察でもするような言葉に、リルフィは腹を立てたのだけど。それ以上に。
 茨姫は、一体何がしたいんだろうな。
 主の無神経な言葉に、思わず抉ってやろうと飛び掛ろうとし、すんでの所でジルファに止められた。
 それで、ますますジルファに怒りが向く結果になった。
 あんたこそ、一体何考えてるのとリルフィは言いたい。人を侮辱し見下す視線の裏で、何を考えているのと。
「シャール・・・あんたは、何をしたいのかしら」
 リルフィの呟きに、返る言葉は無かった。


>19へ
 

ことのは。 

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オリジナル 

各タイトルをクリックすると、作品別のindexにとびます。

World〜きみのためにできること〜


原案:亨珈

執筆:亨珈&水花のリレー


2003年に完成。
本編56話完結
外伝
『いちばんはじめのおくりもの』
9話完結
執筆:水花
続編短編集
多数あります。
 

二次創作 

版権モノの二次創作です。タイトルにマウスオンでジャンル確認できます。クリックで作品別のindexにとびます。

BLUE GENE

執筆: 水花

HAPPY HAPPY VALENTINE

執筆: 水花

GARDEN

執筆: 水花

月下美人

原作:古森 壽
/脚色&執筆:亨珈

SNOW BLIND

執筆: 水花

はなさくにわへ

執筆: 水花

FAIR ≠ FEAR

執筆: 水花

JOKERシリーズ

執筆: 冒険者ギルド藤戸支部
side 亨珈

鋼の錬金術師 短編集

執筆:水花

 

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